4 your eyes only

水の方の「やすみ」さんについて

 もっと有意義なブログにしよう。というわけで本について語ることにした。とりあえずは。後からもっと色々増やす予定では……ない。気ままにやるのがモットーであって目標とかそういうのはない。従って何かに沿って文章を書き続ける必要性も存在しないのだ。

 で、タイトルに戻る。世の中には「やすみ」さんが何人かいて、あるいは何人も、そしてその中で水の入る人がいる。著者名の話である。そう、津原泰水だ。俺はこの作家が好きだ。最初に読んだのがNOVA2の「五色の舟」だった、ような気がする。たしかその後「バレエ・メカニック」に手を出した、筈である。何分、読書の記録を付け出したのが最近であるため、それ以前については曖昧である。そういえばイーガンを読んだのは高2の頃だっけか。いや、乱歩くらいしかその頃は読んでいなかった筈。でも神様のパズルを確か……。まあこんな有り様で、重要なのはいつではなく、どう感じたかだよね、と流れを転換したい。その頃(津原を読み始めた頃。まあ今でもほとんどそれと変わらないんだけど)は既に円城塔という怪物によって俺の読書観は完全に破壊されてしまっていたので、今更普通の小説なんて読んでられっかよ! という厨二的嗜好を持ちだしていた。だから「五色の舟」を読んだ時は大変驚いた。まずSFじゃないし(何がSFなのかは俺自身よく分かってない。フィール?)、幻想文学(当時は全然知らなかった、単語すら)だったからだ。その独特の文章、妙に生々しい描写、美しいラスト、全てが衝撃的だった。それから俺にとって幻想文学が、そして津原泰水が、大切なものとなっていったのだ。

 津原の文章は美しい。それは簡潔さから来るものではなく、むしろ雑然とした、しかし明快さも持っている美しさだ。彼の文章は時に横道に逸れる。が、それもまた美しさを構成する一因となる。雑然。そう言えば「バレエ・メカニック」は章ごとにジャンルが変わるような構造を持っていた。幻想をベースにしているのは確かだが、ミステリとSF、しかもサイバーパンク風味となるとこれはまさに異常である。信じられないことに、そうした意外過ぎるジャンルの変化に対しても津原の文章は変わらない。俺はそれまでジャンルにはジャンルの文法があり、文章があるものと勝手に思っていた。そうではなかったのだ。ありがとう津原先生。また一つ賢くなったよ。でもエンタメ系の(括りが適当過ぎるが)作家はどれも似たような読みやすさ第一の文章になってると思うよ。

 外部からの情報の取り入れにも、津原は優れている。まさか誰がウチダザリガニについて詳しく書いてくると思うか。あれについては害のある外来種としか認識がなかったが、まさか食べるとは。ロブスターとかアメリカでは喰うらしいけど、日本ではちょっと。他にもゲテモノ食いについて津原は書いている。うーんどこからそんな情報を入手しているんだ。芸術関連でも地理でもなんでも。作家って普段何してるんだ?

 しかしまだ読んでない津原はたくさんある。正直マジもんのファンには申し訳ないという程度しか読んでない。金と暇さえあればいくらでも本が読めるのに、と思うが、それがあれば他のこともしているだろうというのもまた確か。本を読む時間は意識して作らなければいけない。生活の中に埋まってしまうから。それを考えると、やはり俺は本読みとしてたいしたことはないのか。まあオールラウンダ―だし、一芸に秀でたら負けだよね()。